国家財政は破綻寸前 その5 海外ヘッジファンドが日本国債の暴落を仕掛ける

前回までに、国債の価格と金利には相関関係があること、米国長期金利の上昇が日銀のゼロ金利政策に破綻をきたすであろうことを論じてきました。

 

更に前号のブログでは国債金利の2%の上昇が1000兆円に達する国債の流通価値を140兆円毀損することを数値を使って説明しました。

 

もうひとつ見落としてならないのは海外ヘッジファンド(主としてタックスヘイブンに本拠地を置く米国ヘッジファンド)の動向です。

 

1997年に勃発したアジア通貨危機を覚えていらっしゃるでしょうか。米系ヘッジファンドがタイバーツの空売りを仕掛け通貨価値が暴落、その影響が他の東南アジア諸国や韓国に及びました。各国の通貨は軒並み半分程度に価値を下げ経済は大混乱をきたしました。結果タイ、インドネシア、フィリピンがIMFの管理下に入りました(IMFの管理については別途書きます)。

 

このとき著名な投資家(真の姿は投機家)ジョージソロスが先導して空売りを仕掛け巨額の利益を手にしたことは有名です。ソロスに代表されるヘッジファンドはお金を儲けることしか頭にありません。そこには自らの行為がいかに他の人を苦しめるかなどという疑問が入ることはない。ソロスはロスチャイルド代理人です。ロスチャイルドが表に立つことはない。ロスチャイルドの意を受けソロスのような代理人が表で動きます。ロスチャイルドも戦争で儲け、恐慌のときに底値で株を買ってこの200年で巨大な富と権力を手に入れています。

 

話を戻します。当時タイをはじめ東南アジア各国はドルペッグ制(簡単に言うと固定相場制)をとっていました。ソロスは経済の実態(ファンダメンタルズ)に対しタイバーツの米ドルに対する交換比率が異常にに高く設定されていることをついて空売りを仕掛けました。

 

国債にも同じような売り浴びせが起きる可能性はあるのでしょうか。残念ながら答えは「イエス」です。日本国債は債券市場で売買されています。債券市場は日本だけでなくニューヨークやロンドンにもあります。国債には先物市場もあり空売りもできます。空売りとは現物を持っていなくとも、債権を借りて市場で売却、一定期間が過ぎたら買い戻し、売り買いの差額が利益または損失となる仕組みです。たとえば1億円の国債空売りし8000万円で買い戻したら2000万円の利益を得るということです。ヘッジファンドは証拠金に対しおおむね30倍のレバレッジを効かせて投資するので巨額な取引ができます。100億円の証拠金を積めば3000億円の国債空売りができます。10%下がって買い戻せば300億円の利益です。証拠金の3倍もの利益を得られるのです。

 

日本の国債は格付けも高いし債券のデフォルトのとき元利を保証するCDS(クレディットデフォルトスワップ、これは別途説明します)の料率も低いからヘッジファンドが売りに走ることはありえないという人がいます。

 

日本国債は本日現在S&PではA+,ムーディーズではA1の格付けで「安定的」との評価です。トップレートはAAAですがこの25年で日本国債は4段階レートを下げています。一方国債の信用(言い換えればデフォルトリスク)を表すCDS料率は現在20ベーシスポイント(0.2%)前後。200ポイント(2%)で要注意、(イタリア国債がこのあたり)400ポイント(4%)が危険と言われていますので、まだまだ余裕があります。

 

しかし、格付けというのも所詮は人間のやることです。リーマン危機のとき”Too big to fail"(大きすぎてつぶせない)という理由で救済された米国AIG保険が多量に保有していたデリバティブ証券の一種MBS(住宅ローン保障証券)の格付けはトップのAAAだったのです。ちなみにMBSは当時額面から4割価値が下がっていました。にもかかわらず格付け会社は最高レーティングをつけていたのです。

 

CDSの料率は基本的には債券の回収リスクについての評価をベースにはしていますが、人の思惑という情緒的なファクターが十分入り込む世界です。これは銀行の取り付け騒ぎに似たところがあります。40年以上前に地方銀行取り付け騒ぎがあったのを覚えています。バスの乗客の一人が「あの銀行は危ないらしい」としゃべっていた話が広まり騒動になったことが判明しています。CDSの売り手、買い手が対象の債券がやばいと判断すれば他のディーラーも同調し、不安が不安を呼んで一挙に料率が高騰することがありえます。CDSの料率が現在は低くともGDPの2倍程度に膨らんだ国債残高、限界に来た日銀の金融政策に世界の投機筋が気づかないわけがありません。

 

既に米国のヘッジファンドが2度ほど日本国債空売りを仕掛けたことがあるそうです。結果は失敗。5年以上前の話のようですが日本国債を取り巻く状況は当時の数倍も深刻になっています。いつヘッジファンドの攻撃にあっても不思議ではありません。

 

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