上場地銀7割減益 異次元金融緩和の余波
異次元金融緩和により長期金利がほぼほぼ0%に抑えられているのはご承知のとおりです。
ゼロ金利政策は金融機関の収益に大きく影響しています。三大銀行(メガバンク)が大幅なリストラを
発表したのはつい先日のことです。
地方銀行は大手都銀に比べ財務体質が著しく弱く本業の利ざやで利益を得るモデルがもはや機能していません。
こうした中で上場地銀の9月中間決算が発表されました。以下東京新聞本日11月16日付け朝刊の抜粋です。
それによるとマイナス金利により貸し出し利ざや縮小が続き全体の7割に当たる55社が減益となりました。減益社数は前年の同期の約6割から拡大、純利益の合計は前年同期比の11.8%の4,793億円でした。
集計したモルガンスタンレー証券によると、国内の利ざやの縮小に加え、米金利の上昇で、多くの地銀が保有外債で損失計上を迫られたとのことです。
ここで若干の説明が必要ですが以前のブログに国債と金利には相関関係にあり金利が上がると国債の価格は下がることを書きました。記事中の保有外債は大方米国債と考えて間違いないでしょう。
たとえば地銀が10年もの米国債を金利1.5%のときに購入したとします。現在10年物米国債の金利は約3.2%ですから保有国債の価値は次のとおり減じます。
(1+0.015X10)÷(1+0.032X10)=0.871
1-0.871=12.9%
すなわち12.9%の損失が生じます。
1000億円の米国債を保有していたら129億円という損失が生じることになります。
このような損失がつみあがって上場地銀の純利益合計が5000億円を下回る水準となったわけです。
地銀は米国債だけでなく日本国債も多く保有しています。今後国債金利が上がっていけば保有国債にも損失が生じてきます。たびたび指摘していますがこれは金融危機の引き金になる可能性が大きいです。
生き物も企業も弱いところから淘汰されていきます。
しかし異次元金融緩和という名の下に金融機関が疲弊するというのはどこかおかしくないでしょうか。